WORKS
-instrumental
The Emperor
学生の頃の力作。作成当時「もののけ姫」のCMに使われていた曲に刺激を受けアップテンポでビートを刻むスタイルを取り入れた。あの活力溢れる曲がどうして本編に使われなかったのか本当に謎だが、さておきDTMに慣れてきた頃、楽しいがままに効果音や特殊な音色を使ってみたりeffectを重ね着させたりを実験していた。その辺に注視して聴いて頂くのも面白いかもしれない。
Along with the Memories
こちらも若かりし頃の一品。それまで思いつきで並べていたメロディであったが、この頃辺りから和声や形式だけでなく、メロディの構築の仕方を意識するようになってくる。全体的に四分音符、八分音符、八分音符の音の組合せで成るテーマから変形、展開を図った。それによって大衆的な空気を多少なりとも軽減できたように思う。
Electric Train
例えば、車のハザードを焚いた時、車内で聞こえるカチ、カチ、という音とライトの点滅とのタイミングが最初は同時にスタートしても少しずつずれていくように、また、遮断機の鳴る音が手前と向こう側で少しずつずれていくその音の重なりはやがて一周廻って再びピタリと一致するように。
サンプリング音「ill」のループを、わずかに圧縮し重ねた音を背景に少しずつ音数が増え音楽を形成する、風羽 藍玖のminimal music。
Epilogue
よくあるメロディ、バッキングキーボード、ベース、ドラムの編成によるエンディングテーマ的なBGM。きっと二度とこの手の音楽は作らないであろう一品。単純で軽率で誰でも作れて馴染める性格で、しかしそれ故気持ちを楽にしてくれる。
-ensemble
Evocaciones No.1〜HAHA〜
Violin:山口 美夕鶴 Piano:風羽 藍玖
回想曲。思いを馳せるテーマを音符に変換し、メロディを構築するシリーズ第1弾。第1番は母、並べられた綴りがそのまま音程を示すことができたことから、シリーズ化しても面白いかと感じ、個展では第2番「夢」、第3番は「時」と続く。技巧的な見世物ではなく、想いを綴った歌。
Nocturne
Flute:筧 孝也 Piano:新屋 千夏
筧 孝也の初演から山田 有理亜(pf:内田 有紀)、磯貝 俊幸(pf:村松 麻衣)の再演を重ねたお気に入りの一曲。近現代のノクターンの中には写実的なものも見られ、ロマンティシズム溢れる楽想とは対極的にある。フラッターやノンビブラートなど効果的に配置できたところもお気に入りの理由の一つ。
Sign
Alto saxophone: 遠山 寛治 Piano:平手 裕紀
今や若手社長と邁進中の、教え子の為に認めた一品。無機的なテーマと中間部から成る本編に、タイトルの文字列から変換した音の並びで付けられたコーダが古典的な性格を持ち、程よいバランスを取ることができた。
声のする方 ⅲ.振り返る場所
Clarinet duo 1st:中村 由加里 2nd:小田 美沙紀
ーただただ執拗に歩いていた道程に ふと我に返るところ これまでの軌跡と これからの広大な未来にもさほど気に留めずー
なんとなくの日常から認めた短い詩に合わせて作られた小品。全5曲から成る、第3曲。
B管のクラリネットは音域が広く、2本のメロディであっても十分にバス、伴奏、旋律を担わせることができ、シャルモーの中音域などのハーモニーはとても豊かに味わえる。
Trio
Violin:竹田 千波 Violoncello:深谷 展晃 Piano:霜浦 陽子
個展での録音。何とこの演奏、合わせに一度も立ち会っていない。にも関わらず、全体を通しての楽曲の構成をよく捉えられた、変奏ごとのキャラクタを上手に表現された演奏を披露してくれ、お気に入りの一曲となった。後半はピアノからの主題が4回変奏されるが、変奏の途中性格を変え起伏、形式のバランスをとるよう工夫をした。
Piccola Storia -Di Quei Giorni a Voi-
Piano:風羽 藍玖
個展での村松 麻衣の透明感のある演奏からヒントを得、自らの解釈を進め再録音。長い間ピアノに慣れ親しんで来たからこそ、ピアノの曲を作るのが一番難しい。オケやアンサンブルと違って、一人でアンサンブル全てをコントロールできる特徴は、一番声の伝えやすい楽器なのだと、改めてピアノの魅力を知る。
沈む世界
Piano:柴田 育代
辺り一面果てしなく濃い青が続く一人取り残された深い海の世界。危機感や絶望感はそこになく、むしろただただ心地良く全てを悟って静寂に身をまかせている、そんな風景を描いた作品。大きめのロンド形式で9分近い大曲。演奏者の腕によってひと回りもふた回りも昇華された。中盤のテンポを上げるアイデアは渡辺 康氏の発案。